似ているかどうか、アンケートで聞いてみよう(ユナイテッド)

例えば商標が似ているか、区別できるか、だれが判断するのでしょう。審査官でも裁判官でもない、われわれ消費者ですね。こうした消費者の声を争いに反映させる手段これが「アンケート証拠」。最近の事例を紹介しましょう。


侵害の発生
ハワード社は、左の商標を持っています。ローマ字とカタカナの2段書きです。ところがカイタック社が右の商標をつけたポロシャツなどの販売を始めました。ハワード社は、左の商標権の侵害だとして、差し止めと損賠償を請求したのがこの事件です。


ハワード側の主張
両商標はズバリ同じとは言えません。そこでハワード社はこう主張しました。
『衣料品業界では「コレクション」は集合体や同系列の出所を表す名称。出所を識別する部分ではない。』『したがって「ユナイテッド」が共通している商標の使用は侵害だ』と。
その例として、「ミカレディー」と「ミカレディーコレクション」など、連合(類似)として登録された多数の例を出しました。


被告側の主張
カイタック社は消費者は「ユナイテッド」だけで区別はしない、と反論。根拠は?
「ユナイテッド」を前後に含んだ商標がすでに90以上も独立して登録されているからです。だから「ユナイテッド」と「ユナイテッド・コレクション」は区別できるというのです。


アンケート証拠
消費者が混同するか、区別できるか、その証拠をアンケートに求めてまずハワード社が調査にのりだしました。結果はどうだったか?ハワード側のアンケートは次の通り。

似ていると思う7割以上
同じ系列のシリーズでしょう6割
共通ブランド中の一部の商品じゃない?最多回答
コレクションの部分はサブタイトルみたい6割

これに張り合ってか、被告側も提出。そちらの結果は、「両商標は明らかに違う」「別のメーカーだと思う」という回答が多数を占めました。


裁判所の判断
被告カイタックのアンケート調査には問題が指摘されました。
商標をタグ(付け札)に印刷した状態で比較したのですが、タグ全体のイメージが異なっていたのです。質問も、肝心の「商標の違い」ではなく、「タグの違い」を聞いていたのです。
結局、原告ハワードの主張が認められました。判決には「ユナイテッド」の部分の識別力についても言及してますが、その理由付けは、アンケート結果から逆に導き出したともいえそうです。


アンケート証拠の今後
日本でも最近は、不正競争の「混同」や、商標の「類似」の争いにアンケート証拠が出されるようになってきました。審査官、裁判官の判断を支える客観的な資料として大いに利用され、議論が深められることが望まれます。